2021年4月から6月にかけてIHIステージアラウンド東京で上演された舞台『刀剣乱舞』シリーズ第11弾。

前作「天伝 蒼空の兵 -大坂冬の陣-」の続編として、史実とは異なる局面で展開される大坂夏の陣を描いた作品。

360度回転劇場ステアラでの迫力ある演出と、真田十勇士との戦いを軸にした重厚な物語で観客を魅了した。2022年には劇場版として映画化もされ、DVDとBlu-rayで発売されている。

概要・あらすじ

西暦2205年、歴史修正主義者による過去への攻撃に対抗するため、審神者によって生み出された刀剣男士たちが歴史を守る戦いに身を投じる物語。

慶長19年、大坂夏の陣の時代に、へし切長谷部を隊長とする三日月宗近、鶴丸国永、数珠丸恒次、骨喰藤四郎、薬研藤四郎からなる部隊が出陣する。

しかし到着した大坂城下町では、豊臣軍が徳川軍に連戦連勝しているという史実とは異なる状況が展開していた。

刀剣男士たちは史実には存在しないはずの真田十勇士と遭遇し、複雑な戦いに巻き込まれていく。

登場人物

三日月宗近 – 鈴木拡樹

平安時代に作られた天下五剣の一振りで、自らを”じじい”と称する飄々とした性格の刀剣男士。3年ぶりの登場となった本作では、かつての主である高台院との再会という重要な局面を迎える。鈴木拡樹は2016年のシリーズ開始時から三日月宗近を演じ続けており、優雅さと凄みを併せ持つ殺陣と深みのある演技で観客を魅了している。戦闘前に”給料分は仕事をするか”と呟く独特のセリフも印象的で、天下五剣らしい品格と茶目っ気を兼ね備えたキャラクターとして愛されている。

へし切長谷部 – 和田雅成

織田信長の愛刀として知られる刀剣男士で、本作では部隊の隊長を務める重要な役どころ。生真面目で責任感が強く、常に任務を第一に考える性格が特徴。和田雅成は長谷部の厳格さと内に秘めた情熱を巧みに表現し、隊長としてのリーダーシップと仲間への深い思いやりを見事に演じている。360度回転劇場での立廻りでは、その精密な動きと力強い存在感で観客を圧倒。真田十勇士との対峙では、歴史を守るという使命感と個人的な感情の間で揺れ動く複雑な心境を表現している。

薬研藤四郎 – 北村諒

短刀でありながら頼もしい存在感を持つ刀剣男士で、約5年ぶりの登場となった。明るく人懐っこい性格で、チームの雰囲気を和ませる役割を果たしている。北村諒は薬研藤四郎の持つエネルギッシュな魅力と、戦闘時の勇敢さを見事に演じ分けている。短刀という設定でありながら、長剣に劣らない迫力ある殺陣を披露し、小柄な体格を活かした機敏な動きで真田十勇士との戦いに挑む。仲間思いの性格と戦士としての強さを両立させた魅力的なキャラクターとして描かれている。

見どころ

360度回転劇場ステアラならではの迫力ある演出が最大の魅力。観客席が回転することで、戦場の臨場感と立体的な空間演出を実現している。

真田十勇士という史実には存在しない人物たちとの戦いは、虚構と現実が交錯する刀剣乱舞らしいテーマを色濃く反映している。

鈴木拡樹による三日月宗近の3年ぶりの復帰は大きな話題となり、前作から引き継がれる重厚な物語展開も見逃せない。各キャラクターの複雑な心境が丁寧に描かれ、アクションと心理描写のバランスが絶妙に保たれている。

どこで見れるか

2022年5月に劇場版として3週間限定で上映され、現在はBlu-ray・DVDとして発売中。松竹の公式通販サイトや各種ECサイトで購入可能で、劇場版では22台のカメラで収録された高精細な映像を楽しめる。一部の動画配信サービスでもレンタル配信が行われており、自宅で気軽に視聴できる。また、日テレプラスでのテレビ放送も実施されており、放送スケジュールは公式サイトで確認可能。公演パンフレットも別途販売されており、詳細な設定資料や出演者インタビューを読める。

まとめ

「无伝 夕紅の士 -大坂夏の陣-」は、舞台『刀剣乱舞』シリーズの中でも特に重厚な物語性と革新的な演出で注目を集めた作品である。

360度回転劇場という特殊な舞台装置を活用した迫力ある戦闘シーンと、史実と虚構が入り交ざる複雑な物語構造は、シリーズの新たな可能性を示した。

鈴木拡樹をはじめとする実力派俳優陣の熱演により、キャラクターの心情が丁寧に描かれ、ファンからの高い評価を獲得している。

刀剣乱舞の世界観を舞台芸術として昇華させた傑作である。