デスク席から(95) 時には波風たてて25年~NAGI~
三重県政を担当していた時、記者クラブに「こんな季刊誌を発刊します」というリリースがあり、「今までになかった斬新な雑誌が出るんだ」と感じたことを覚えています。
2000年のことでした。出版社は月兎舎(伊勢市)で、本の名前はNAGI凪(なぎ)。
創刊号のテーマは、沢村栄治と西村幸生。ともに伊勢市出身で、プロ野球の巨人と阪神でそれぞれ活躍しましたが、戦死。このテーマを創刊号に持ってきたところに、まず興味を持ちました。
その後、様々なテーマで98冊(号)が製作されてきました。「ご遷宮と伊勢」「松浦武四郎」「自然遺産」「お寺ルネサンス」「アウトドア防災」「犬と暮らせば」「巨岩に会いに」「廃校の活かし方」「還暦からのハローワーク」「温泉ハイキング」「古民家食堂」「ロケ地巡礼」「銭湯」…
これらはほんの一例ですが、単なる旅とグルメの雑誌でないことがわかってもらえると思います。
そんな地域誌が、来年春の100号をもって終刊するという情報を耳にし、寂しさを感じつつ、今月、月兎舎さんを取材に。
発行人の吉川和之さん(62)は「その時限りの流行じゃなくて、地に足のついた文化・価値観を、“人”を切り口にして伝えてきました」と振り返り、編集長の坂美幸さん(55)は「知らなかった歴史的なことも地域の人がいろいろ教えてくれるので、それが地元密着の面白さでした」と語りました。
Mieライブでは、9月4日(水)放送の月刊大谷ジャーナルで、終刊の背景や印象に残ったテーマをふたりにお聞きするほか、取材の様子も紹介します。
「情報ソースがデジタルコンテンツになった」(吉川さん)いま、活字文化の役割と功績について考えてみませんか。
報道制作局 小川秀幸